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ズル……ズル……
(あらぁ?キマイラちゃんまだ生きてるじゃない。詰めが甘いわねぇ)
大蛇は瀕死の身体で最後の攻撃を仕掛けようとしている。
しかし悠斗はそれに気付いていない。
(しょうがないわねぇ……)
「横に跳んだほうがいいわよぉ」
陰の出したその声に悠斗は従い、結果キマイラの一撃をかわした。
(素直な子ね。お姉さん素直な子は好きよぉ)
今の攻撃で力を使い果たしたキマイラは今度こそ息絶えた。
「ユウトさーーーーーん!」
闘いが終わったことで訪れた静寂をもう一度破るようにシルの声が響く。
(お仲間がいたのね。そろそろ潮時かしら?)
陰はそう考えると自身の影を波打たせる。
そして、水のようになった影に沈んでいった。
(次会えるのを楽しみにしてるわね、ユウトくん♪)
誰の耳にも届かない心の声を残し、陰は森から消えた。
唯一シルだけは微かな気配に気付いたようだが、森の動物だろうと自己解決し、すぐにそれを忘れてしまった。
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