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やり方はちょっとアレだが、アッシュのオッサンに悪気はないのだろう。
留め具が外れた袋からは金の体毛を蓄えた毛皮が覗く。
まだしっかり鞣(なめ)していないがこれはキマイラの毛皮だ。
「ん?毛皮?」
そう言いながら袋からはみ出た分の毛皮を撫でる。
何か考えるように数度手を毛皮の上で往復させると、ハッと思い出したような顔をした。
「こ、こりゃまさか!?」
「ストップ!!ストップ!!」
「キマイラ!!!??」
あっちゃぁ……
アッシュさんの声は無駄にでかく、酒場にまでよく通った。
そして鼓舞を続けるギルド員も、地図とにらめっこしている騎士も皆『キマイラ』というワードに反応して目線をこちらに向ける。
全員耳がダンボだ。
「お、おめーらが倒したのか?!いや、そんなこと出来るはずが……」
アッシュさんはキマイラの皮とそれを持っている人物、つまり俺とのギャップに戸惑っている。
これが本当にキマイラの皮なら討伐したのは俺ってことになるからなぁ。
実際そうなんだけど、俺の見た目ではとても力があるようには見えないんだろうな。
自分で言うのもなんだが。
「騒々しいのぅ」
カウンターの方からしゃがれた声が聞こえたと思えば、やや腰の曲がった小さな老人が杖をつきながら出てきた。
ココット村で村長をやっていそうな風貌だ。
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