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別にこの人達は俺のサインが欲しいわけではないよな?
「おい!」
壁になっていた人の中から何かの毛皮で出来ているらしい鎧を着た男が前に出た。
「どうやって二人でキマイラを倒したんだ!?」
「俺達にも詳しく教えてくれよ!」
「そうだそうだ!」
毛皮鎧の男に触発され、周りがそれに同調した。
「どんな手を使ったんだ?」
「やっぱり魔法か?」
「キマイラでかかったか!?」
「おい!黙ってないで話聞かせろよ!」
転校生ってこんな気分なんだろうか。
いや、ね。分かってたよ。
質問責めだなコレは、って。
でもね、質問が多すぎて答える隙も与えてくれないんじゃどうしようもないじゃまいか。
俺は聖徳太子じゃないのだよワトソン君。
「まぁ待て。質問数が多くて彼が答えられないではないか。ギルド員は後回しにして、まずは私達に詳しく教えては貰えないか?」
「あぁ?これはギルドのことなんだぜ?そんなら騎士様が引っ込んでてくれや」
プレートで出来た鎧を着た騎士の一人がそう言えば、乱暴そうなギルド員がそれに噛み付いた。
「何を言う、我々には報告の義務があるのだ。貴様らこそ後にしろ」
……何か知らんが、俺への尋問の順番でギルド員と騎士が喧嘩を始めたぞ。
「なんだとぉ?やんのかコラ」
「全く、これだから単細胞は」
正直どっちもどっちです。
まさに一触即発、って俺のせいじゃないよね?ね?
キーンキーン キーンキーン
何の音だ?
その鉄を針で叩くような高い音にざわざわしていたギルド内に静けさが戻った。
音のする方へ目を向けると、壁の天井に近い部分に大きめの水晶が嵌め込まれていた。
あれから音が出ている。
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