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俺は左手に握る冷たい金属の質感をもったそいつを見る。
初めて取り出した武器、それは先が三つにわかれた鉾(ほこ)。
―――『トライデント』
ギリシャ神話のオリュンポス12神、その1柱。地震、馬、そして海を司る神ポセイドンが使う三又の鉾だ。
単眼の巨人キュクロプスの手で造られたこの鉾は、海を掻き回せば嵐を起こすという能力に代表されるように、自在に海を操る力をもつ。しかしその力は海のみならず、泉や地下水などの水に関わるすべてを支配下に置くことができる。
まさに海の支配者ポセイドンに相応しい武器といえるだろう。
俺はトライデントを強く握ると、迷わず石突で地面を打った。
するとあちこちで地下水が間欠泉の如く吹き出し、建物に降り注ぐ。
飢えた猛獣のように荒れ狂う炎はあっという間に鎮静化した。
「な、なんだ!?火が消えちまったぞ!」
「こりゃ水の魔法か?」
「こんな広範囲の魔法見たことねーぞ!」
さっきは煙のせいで見えなかったが、広場のようなところに汚らしい身なりの男が約二十人。それぞれが様々な武器を持っている。
そしてその傍らには縄で縛られ、身動きがとれない人々。
間違いなくこいつらが盗賊だな。
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