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時は進み、悠斗たちが村を出発した日の昼過ぎ。
ここは白を基調とした壁に囲まれた王城の一室。
その奥に置かれた木の机に、腰の辺りまで茜色の髪を伸ばした女性が座っていた。
動き易そうな軽装備に細身の剣を帯びている。
顔のバランスがよく、かなりの美人といっても遜色はない。
しかし、少し垂れた目が柔和な雰囲気をだしていて、美人特有の近寄りがたいオーラは出ていない。
そんな彼女は今、机上に山と積まれた書類と闘っていた。
_____________
「…………終わんない」
私――コニス=ジェントラルは、目の前にそびえる書類の山と終わりの見えない闘いを続けている。
本っ当に終わる気がしないわ……。
愚痴っていてもこの山が減ってくれるはずもなく、その存在を主張している。
また一枚の紙を手に取り、文字の羅列に目を通し、欄にサインした。
延々と朝からこの作業なもんだからいい加減嫌気がさす。
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