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《フレイムボール》は下級に位置する魔法だ。
ただ火の玉を飛ばすだけの魔法だが、直撃すれば大火傷を負わすだけの威力はある。
それに対して青年は防ごうとも避けようともしない。
この何の変哲もない魔法になんだか見とれているようにも見える。
すると、さっきまでは様子を観ているだけだった少女が《フレイムボール》と青年の間に滑り込むと、あろうことか飛来するソレにかじりついたのだ。
これには流石の私も目がおかしくなったのかと思った。
焼き焦がされるはずの少女の顔には一点の焦げ跡も残さず、《フレイムボール》は綿菓子のように咀嚼された。
一体どんな魔法を使っているのか。
さっぱり見当がつかない。
更に驚くべきはその直後に彼女が発動した魔法だ。
その場にある何よりも赤々と燃え盛る火の玉。
大きさも密度も男の放ったそれとは次元が違う《フレイムボール》。
ここまでくると完全に別の魔法だ。
それを少女は涼しい顔で作り上げた。
目前で格の違いを見せつけられた盗賊は恐怖で気絶。
本当に何なんだこの二人組は―――。
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