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「おいっ!これ持ってってくれ!」
「応急用の治療箱足りてるか?」
「はぁ!?こんだけ?もっと魔水晶爆弾ねぇのか!」
「装備はありったけ持ってくぞ!」
ギルド員達がギルドで魔物撃退の準備に右往左往している。
いつもは昼夜を問わず飲んだくれ達で溢れる酒場でも今は誰も酒を飲んでいない。
オゼットさんが魔物出現の報を伝えてからずっとこの調子だ。
ランクの低い者の中には恐ろしさに挙動不審になる者もいるがそれも仕方がない。
・・
今回現れたのはあのキマイラなのだから。
特別なものもあるが、基本的にギルドのランクと同じようにDからSまでで定められる危険度、キマイラのそれはS。
キマイラは特定のテリトリーを持たず、食糧を求めて各地を徘徊している魔物だ。
ひとたび住み着けばそこに住む家畜も魔物も関係なく、動く物の全てを喰らい尽くす。
無論人間も……
キマイラが住む土地はやがてやせ細るというのも決して誇張ではない。
生態系をズタズタにするキマイラにはそれだけ暴力的な影響力があるのだ。
徘徊するといっても濃い魔力が溜まっている地域に出没する魔物なので、魔力濃度の低い《東の森》に現れるなど普通は有り得ない。
しかし、現実には現れている。
《東の森》とこの王都はさほど離れてはいない。
食糧が尽きれば奴はここに来るだろう。
そんなことになれば、とんでもない被害が出るのは免れない。
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