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俺に対峙するように立つキマイラ。
くまさんズの死体を物色するように、ライオンの首が鼻をスンスンさせながら真っ赤な目を光らせている。
あれか、縄張り荒らした輩に制裁を、とかいうノリか?
それとも俺がスプラッタなことやったから血の臭いに誘われて、か?
どちらにしろ牙を噛み合わせて唸りをあげるキマイラは俺を見つけて臨戦体勢だ。
今更振り返って逃げ出そうとしても、後ろを向いた瞬間襲われるのは目に見えている。
このでかさだ。
きっと一跳びで俺に追いつき、食らいつくだろう。
(やるっきゃないのかなぁ……)
いくら自分が強くなってると分かってても恐いもんは恐い。
普通に生活してりゃこんな化け物に出くわすことなんてないしな。
ファンタジーな世界でもない限り……ってここがそうか。
難儀なもんだ。
俺は攻撃されても反応ができるようにキマイラの動向を見詰める。
キマイラは前脚を折り、先程より姿勢を低くしている。
咄嗟に、後ろ脚に力が込められているのを悟った俺は思いっきり上にジャンプした。
ビュッ
風切り音に下を向いた俺が見たものは、溜めた身体のバネを解放したキマイラがさっきまで俺が立っていた場所にその鋭牙を突き立て、勢いそのままに通り過ぎる所だった。
―――速いッ!
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