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ちょちょちょっ、炎!?
山羊なのに!
そんな理屈ねぇよとばかりに山羊は喉から頬までを膨らませると火炎を放射する。
俺に向けて一直線にのびる炎は地面の上を通過するだけでそれを焦土と化した。
炎の高温さは火を見るより明らかだ。
火は見てるけどな!
「うおぉぉぉぉぉぉぉ!?」
人間一本焼になんてなりたくない俺はもちろん横に走って避ける。
が、キマイラは首を振り、火炎を横薙ぎにして俺を追尾する。
(……逃げきれないか)
そう判断した俺は再度地を蹴り、迫る火炎の上を抜けた。
しかし、キマイラが姿勢を低くするのを見た時、俺はこの行動が不正解だったと気付いた。
キマイラは狩りのために洗練された身体能力を出し切るように、さっきと同じ、いやそれ以上のスピードで跳躍する。
ナイフのような牙がずらりと並ぶ口を大きくひろげ、狙う獲物はもちろん俺。
翼を持たない俺に空中で自由に動く術はない。
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