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拓磨「べつに他人事とは思ってねえけど」
奈美(どーだか)
拓磨は口を濯(ゆす)いで起床時間、最低限の事を済ませると、玄関へと直行する。
拓磨「行ってきます!」
───ガチャ
奈美「カバンは?」
拓磨「あ……」
急いで椅子に置き忘れたカバンを取りに行く。
奈美「気をつけてねー」
拓磨は玄関扉を再び開くと、振り向きもせずに急いで出ていった。
───ガチャン
部屋でカーテンを開けた時よりも、太陽が眩しく感じる。
拓磨「やけに眩しいな…」
まだ起きてから10分も経っていないため、太陽光に対応できるほど目が慣れていなかった。
快晴なのも原因の一つだ。
「晴れた曇り」か「曇った晴れ」が丁度いい。
太陽が雲の隙間から見えたり、雲に隠れたりするくらいの天気が。
しかし、そんな要望に応えてくれるはずはない。
補習開始の時間も迫っている。
いつもは徒歩での通学なのに、今日は仕方なく自転車に頼ることにした。
門扉(もんぴ)の横には車一台分の駐車場庫があって、そこに銀色のママチャリだけが一台置かれている。
チャリの後輪の留め具を外し、ガチャンと跳ね上がると、サドルに股がった。
───フニャ
体が?
いや、車体が?
いやいや、視界が?
一瞬、何が起こったのか分からなくなった拓磨の動きが止まる。
拓磨「……」
拓磨「…………へ?……」
それは坂道に従って転がるタイヤからなる、ママチャリの違和感で、すぐに理解することができた。
乗り心地が酷(ひど)い。
「空気が入ってない」ことを。
拓磨「・・・」
拓磨(こんなに急いでるのに、よりによって……)
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