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4月23日、夜
夜空は分厚い雲に覆われ、星どころか月すら見えない空。
町の街灯や民家の明かりが雲に淡い光を与え、夜空の濃淡が不気味さを際立たせる。
それとは真逆に位置する地上。
とある居酒屋には、ビールを飲んだり、お摘みを口に入れる4人の男性がいた。
男「かー!♪」
油や煙やらで黒ずんだ緑の土壁にコンクリートの床の居酒屋。
ただ汚れているのではなく、それは数十年間、営業を続けてきた証でもある。
県内の情報を主とする雑誌にも何度か取り上げられ、「この居酒屋を町中で知らない人はいない」と言っても過言ではない。
今、4人の中で一番飲んでいる男は常連の中の常連で、今日は会社の同僚達を率いて一緒に飲んでいた。
男「おがわり!!」
青っぽいネクタイに黒いスーツ姿から、職業はサラリーマンやオフィスや営業であちこちを回っている人、などと予想できる。
短髪の男性、顔が赤いのはアルコールの摂りすぎの証拠。
ネクタイは緩め、仕事からの解放を体で表現するような、正直言ってだらしない格好だ。
同僚「飲み過ぎじゃねえか?」
男「はぁ?いつもこんなんだろ」
当然のように座布団の上で胡座をかいて、堂々と両手を畳に付いて座る中年男。
同じ机で飲み食いする同僚達の言葉を無視し、オーダーは取り消さなかった。
もう何杯目なのか。
それを理解した上で、緑のエプロンをしたおばちゃんがジョッキを持ってやって来た。
おばちゃん「あんまり飲みすぎると吐いちゃうよ」
男「吐かねーよぉ!」
おばちゃん「店で吐かれたら困るから、今日はこれで最後ね」
常連だけあって、酒に強いのは知っていた。
ただ、それがいつか凶にならないようにと、おばあちゃんなりの言葉をかけたのだ。
持ってきたジョッキを空のジョッキと引き替えに男性の前に置くと、空の容器を持ってカウンターへと向かった。
その後、散々に酔っ払った男はビールを飲み干した。
飲み終えたジョッキの底に泡を残したまま、4人の客は席を立つ。
同僚「今日は俺が払っとくよ。
おばちゃん、勘定」
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