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同僚が勘定を済ませている間に、3人は黒ずんだ木枠を潜って外に出る。
最後に勘定を終えた同僚が店を出ると、やけに滑りの良い引き戸をガラガラと閉めた。
男「ハァ飲んだ食った!」
後輩「飲み過ぎですよ…」
男「どーてことねえ!」
同僚「お前を家まで送る"こっち"が、どーってことあんだろ」
男「いーっていーって!
家も近ぇんだから自分で帰れるぜ」
店の前で酒臭い息を同僚の顔に吐きながら言う。
同僚「本当にいいんだな?…」
男「しっつけーなぁー。
いつも見た目より酔っちゃいねえよ」
同僚の心配を酒臭い吐息で返す。
同僚「…………」
男「んじゃぁ気をつけて帰れよなぁ!」
四角い黒色のカバンを持った男は、同僚達にじっと背中を見られながら歩く。
そして右手を大きく挙げてバイバイすると、一人暗い闇の中に吸い込まれるように消えていった。
後輩「大丈夫ですかねー?」
同僚「飲めばいつもあんなんだ」
同僚いわく、あの男がベロンベロンに酔っ払って帰ることは、今に始まったことではないらしい。
残された3人は、酔っ払い男とは反対方向を歩いて居酒屋を後にした。
──路地裏──
もう何時だろうか。
男「恋しちゃったのよ~ララランラン♪」
音痴な歌を口ずさみながら浮かれた調子で歩いている。
なんと近所迷惑な……。
今歩いている路地裏は、3人程がすれ違うだけでギリギリの横幅。
コンクリ造りの民家に挟まれた隙間は、縦に長く、横に狭い。
───ゴトンッ、ゴロゴロ……
突然、後ろで重たいプラスチック容器が倒れ、転げる音がした。
赤い顔を振り向かせて確認する。
すると、ゴミ袋を入れておく為に使われる、円柱状の青いバケツのようなボトルが倒れて転がっていた。
その近くには円盤状のフタが、コロコロと転がっている。
やがてタイヤのように転がるフタは、まるでコマが回転を止めるかのように動かなくなった。
男「なんだ、ゴミ箱か」
何が起こったのか理解できると、安心感に満ちた言葉が口から溢れた。
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