初恋

13/32
前へ
/43ページ
次へ
友永に連れられ美香は保健室にいた。 「1cmくらい切れてるわね…まつキズは残らないと思うけど。喧嘩に加勢でもしたの?元気いいわね!女の子なんだし、お家に連絡しておかないとね…」 養護教諭は50代くらいで笑うと目尻にたくさんシワができる優しい女性だった。 「連絡はしないでください。本当に平気ですから!」 家に連絡されると困ることになる。両親は入学式で、男子が多いことは理解していたが、こんなに荒れた学校だとは知らない。もし知られてしまったら必ず転校することになってしまう。 好んで入学した学校ではないし、教員の考え方も気にいらない。だから転校しても平気だが、友永が気になる。離れたくないと思った。 美香はチラっと友永を見た。 友永は美香の血を拭き取った真っ赤なガーゼを見ていた。視線に気がつき友永は美香を見た。 ガラっ!! おもいっきり扉が開いた。 「美香ちゃん!!どないやねん!死んでないやろな!」 小山に支えられて中野が腫れた顔で保健室に入ってきた。 「あなたのほうが死にそうね!早く処置しましょ。ここにかけなさい。」 養護教諭は中野のキズの処置をはじめた。 美香は教員の名札を見た。(坂本…?坂本先生か…)「痛っ…痛いやんか先生!もうちょっと優しいしてくれんのか?」 「はいはい。痛いのが嫌なら喧嘩しないことね!」 と坂本先生はわらった。 「お前大丈夫か?」 小山が美香のキズを見ながら聞いてきた。 「全然平気!大したことないよ。ありがとう。」 小山は少し笑って 「冷静にあいつら(先生)にあれだけのこと言えるのって…度胸あるな。俺らはすぐに手出ちまうけど。」 「ほんまや!普通、女やったら¨キャー¨とかゆうて見てるだけやのに、あんたはカッコええわ!なぁ?そう思うやろ友永!」 中野が友永にふった。 「帰るわ。」 友永は答えた。 「あ!もうそんな時間か!ほな、さいなら!まっ美香ちゃんは俺が送っていくわ!今日俺バイクやし!」 友永は保健室を出ていった。 美香が¨なんで?¨という表情をしていたのに小山が気づき 「あいつ仕事してるから。一人で住んでるからさ。」 「せやねん。アイツは捨てられてたんや。拾われて施設で育って、養子になってん。その家に馴染めんから今は一人暮らしや!」 美香はまた胸が締め付けられ、何も答えられなかった。
/43ページ

最初のコメントを投稿しよう!

32人が本棚に入れています
本棚に追加