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ガラっ。「席に着け~!」教室のドアがあくと同時に担任の声がした。
生徒たちはダラダラと自分の席に着いていった。
「席に着いたか?それじゃ順番に自己紹介でもしてもらおうか。」
と表情は笑っているが、メガネの関口の目は鋭く、男子生徒たちを一人ずつ吟味しているようだった。
廊下側の列から一人ずつ立ち自己紹介が始まった。
順番が5、6人回ったあたりで美香の後ろからささやく様に声がした。
「ねぇ!美香。どの子がいい?」
真澄だ。
(どの子って…。)
「あんまり興味ないな~」 美香は返事に困った。
真澄が小声でつづけた。 「私はね~次の次の子がいいな!」
(次の次?)
美香が真澄のいう席に目をやると相手も気付いたのか二人の目が合った。
すぐに彼の順番が回ってきた。
彼は気だるそうにゆっくり立ち上がった。
「小山潤。」
潤は自分の名前だけを言い放ち席に着いた。
(怖そうな人…。中学の時友達から借りて観たビーバップ・ハイスクールに出てくる¨とおる¨に似てる!あれは…確か、仲間とおるって俳優がやってたな…でもさっきから皆名前だけ言ってるような気がする…っていうか皆怖そうに見えるんだけど…)
美香は初めてクラスの皆をよく見てみた。
ほとんどの男子生徒が足を左右に大きく開くか、足を組んで座り、手は制服のズボンにのポケットに入れている。姿勢はだらしなく椅子に腰掛けていた。
(うそ…ヤンキー?ばっかり?)
そうだった。白橿学院は元男子校で、かつヤンキーばかりが通う学校だった。
(うそ…どうしよう。また髪のことで騒がれてしまうかもしれない…)
美香はもうクラスメイトの自己紹介など聞く余裕はなかった。
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