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ロッカーは一年生から三年生のものが両側に並んでいて、男子学生達でごった返していた。
(うゎ…さっきの電車みたいだな~。)
「よし!」
美香は自分に気合いを入れて男子生徒の渦をかき分けていった。
「…おぉ!女がいる!」
「お姉ちゃん!潰されないように俺らが抱っこしてやろうか~?」
誰が言ってるのかはわからないが、美香をからかう言葉が飛びかった。
(なんなの?高校生よね?テレビで見た酔っぱらいのおじさんみたい!)
次第に腹が立ってきた。
お嬢様育ちであったが、
美香はかなり気の強いほうだった。
「ちょっと通してくださいね!!」
学生たちの合間をずんずん進んでいった。
(これは毎朝大変だ…)
なんとかたどり着き美香はロッカーを開けた。
「うそ…上靴とれない…」
(昨日あきらちゃんが靴いれてくれたんだった…
どうしよう…)
ロッカーは中が二段になっていて靴は上の段に入れてあった。
背伸びしたり、飛んだりしてみたが届かなかった。
もう一度背伸びして靴に手をやったとき
視界の左から、美香の上靴に傷だらけの手が伸びてきた。
美香は手の主を見た。
(昨日ここで真澄ちゃんが怒ってた人…)
「ほら。」
彼は上靴を美香に差し出した。
「ありがとう…。」
美香が彼の目を見ながらお礼を言うと、
彼はすぐに目をそらせた。
そして右ポケットからキーを取り出し
「こっち使えよ…お前のキーよこしな。」
彼は美香のロッカーと
その真下の自分のロッカーを交換してくれた。
「いいの?ありがとう!」美香は自分のキーを渡した。
「あの…名前…」
名前なんていうの?と言い終わる前に彼は行ってしまった。
(真澄ちゃんは あの人は同じクラスだって言ってたな~ 怖くて冷たそうに感じたけど優しいんだ。)
美香は教室へ急いだ。
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