出会い

10/11
前へ
/43ページ
次へ
ロッカーは一年生から三年生のものが両側に並んでいて、男子学生達でごった返していた。 (うゎ…さっきの電車みたいだな~。) 「よし!」 美香は自分に気合いを入れて男子生徒の渦をかき分けていった。 「…おぉ!女がいる!」 「お姉ちゃん!潰されないように俺らが抱っこしてやろうか~?」 誰が言ってるのかはわからないが、美香をからかう言葉が飛びかった。 (なんなの?高校生よね?テレビで見た酔っぱらいのおじさんみたい!) 次第に腹が立ってきた。 お嬢様育ちであったが、 美香はかなり気の強いほうだった。 「ちょっと通してくださいね!!」 学生たちの合間をずんずん進んでいった。 (これは毎朝大変だ…) なんとかたどり着き美香はロッカーを開けた。 「うそ…上靴とれない…」 (昨日あきらちゃんが靴いれてくれたんだった… どうしよう…) ロッカーは中が二段になっていて靴は上の段に入れてあった。 背伸びしたり、飛んだりしてみたが届かなかった。 もう一度背伸びして靴に手をやったとき 視界の左から、美香の上靴に傷だらけの手が伸びてきた。 美香は手の主を見た。 (昨日ここで真澄ちゃんが怒ってた人…) 「ほら。」 彼は上靴を美香に差し出した。 「ありがとう…。」 美香が彼の目を見ながらお礼を言うと、 彼はすぐに目をそらせた。 そして右ポケットからキーを取り出し 「こっち使えよ…お前のキーよこしな。」 彼は美香のロッカーと その真下の自分のロッカーを交換してくれた。 「いいの?ありがとう!」美香は自分のキーを渡した。 「あの…名前…」 名前なんていうの?と言い終わる前に彼は行ってしまった。 (真澄ちゃんは あの人は同じクラスだって言ってたな~ 怖くて冷たそうに感じたけど優しいんだ。) 美香は教室へ急いだ。
/43ページ

最初のコメントを投稿しよう!

32人が本棚に入れています
本棚に追加