初恋

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美香は教室へ入った。 真澄が教室の後ろで何人かの男の子ときゃっきゃと笑っていた。 「おはよう!美香もおいでよ!すごく面白いよ~!」と手招きした。 美香はニッコリと笑って席に着き、カバンから一冊の本を取り出した。 ¨真夜中は別の顔¨ 作者はシドニー・シェルダン。 美香はこの作家の作品がとても好きだった。 登下校の電車で、読みながら通学しようと思っていたが、今朝のような混雑ぶりでは ゆっくり読むなんてできそうにもない。 始業のチャイムまで15分ほどある。美香は本を読みはじめた。 数ページほど読み進んだところで 耳元に気配を感じた。 「なんや?この~漢字ばっかりの本は?絵がいっこもないやん!よぅこんなん読めるなぁ~。俺、漢字見ただけで頭痛くなるわ。」 中野が横から覗きこんでいた。 「面白いよ。最後まで犯人が誰だか検討つかないし ドキドキしちゃうよ。」 美香は好きなものを共有したくて中野に本の表紙を見せた。 「あかん!あかんわ!表紙にも絵ないやんか!」 (面白い人…) 美香は中野の反応が面白くて吹き出した。 「美香ちゃん。あんた笑うとごっつい可愛いやん!」 中野に真剣な顔で言われ 美香は恥ずかしくなった。 「今度は恥ずかしいんか?たまらんな!」 美香はうつむいたまま、もう顔をあげることができなかった。 「あきら!どうしたの!」教室に入ってきた あきらに真澄が駆け寄った。 目を真っ赤にした あきらが美香のほうに歩いてきた。 「あとで話し聞いてくれる?」 あきらは泣いたあとらしいが ニッコリ笑っている。 (辛そうじゃないみたい…) 「もちろん。」 美香も優しく笑った。 真澄は何かあったの?というように首を傾げていた。
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