32人が本棚に入れています
本棚に追加
2時限目
英語の小テストが配布された。
(うそ…何これ…中学一年の問題じゃない?)
美香は問題を一通り見て驚いた。
「なんぼ難しいねん!あかんわ!何が悲しいて日本人が英語勉強せなあかんねん!」
隣を見ると中野がシャーペンをくわえていた。
友永は居眠り。
小山はテスト用紙を折り紙にして何かを折っていた。
美香が問題を解くのに5分もかからなかった。
見直しも終わり残った時間をどうしようか考えていると 見回りしていた担任が美香の解答を覗きこんできた。
「はは!石川!さすがだな。満点だ。実は石川用に別にテストを用意してあるだ!こっちを解いていなさい」
担任は美香の机にプリントの山を置いた。
「美香ちゃんすごいな!頭ええねんな!俺賢い女好きやねん!」
中野がそういいながら美香に近づこうと席を立った。
バシっ!
音と同時に中野が顔を歪めた。 担任は中野の背中を竹刀で打っていた。
「われ!何すんねん!」
中野は担任の襟を掴んだ。
美香は教師が竹刀で生徒を殴ったことに言葉がでなかった。
「なんだ?中野。 先生に何をするつもりだ?」
担任と中野が睨みあっていた。
小山が席を立ち、二人の方へ歩いてきた。
美香は我慢できなかった。生徒がふざけているのを制止するのに教師が竹刀で生徒に暴力を振るったからだ。
「先生。間違っていませんか?暴力でルールを押し付けるのが、教師の仕事なんですか? 人間には他の動物が持てなかった言葉があるんです。その特有の知性を使って物事を解決することを教えていくのも教師の役目だと思います。暴力は暴力しか生みません。」
美香は真っ直ぐ担任を見据えて抗議した。
教室は静まりかえった。
「はははは!」
大声で笑ったのは友永だった。
小山はじっと美香を見ていた。
「そうだな。先生少しやりすぎたかな? 石川…すまなかったな…」
担任は美香に謝った。
「私じゃありませんよ。謝る相手は中野くんです。」
美香はハッとした。
我慢できずに感情のまま言いたいことを言ってしまったからだ。
「先生ごめんなさい。生意気なこといって。」
「はは!いいんだ。さっ席につきなさい。テスト中だぞ。」
友永と小山は美香が席に着くのをジッと眺めていた。
「美香ちゃん…ありがとな…俺、誰かにかばってもろたん初めてや…」
中野は優しい目で美香を見ていた。
最初のコメントを投稿しよう!