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小山と中野は驚いていた。友永が誰かのために動いたからだ。
美香は体の熱い血液が一気に流れて、心臓の拍動がドクンドクンと大きく早く打っているのを感じた。
怖いものから守ってくれるのは父親ただ一人しかいないと思っていたのに、男の子は意地悪なものと思っていたのに。心臓を力一杯握り潰されているように感じた。
美香は初めての感情にとまどった。
中野に連れられて席に戻る間、心臓の音が皆に聞こえるのではないかと左手で制服の胸元をギュッとつかんでいた。
授業が始まったが嫌いなものを間近で見た恐怖と心臓の拍動とで、美香は講義など全く聞いていなかった。
中野はさっきの友永の行動と美香の様子がおかしいことに何か焦りを覚えていた。
(なんでや。友永が女を助けるとか今までないし、美香ちゃんはなんや呼吸早いし… なんや俺…イライラしてきてるやん。俺、この子に惚れてもうたかな?)
小山は友永をみた。
(友永…どうしたんだ?)
昼休みになった。
「あれ?美香ちゃんお弁当持ってきてるんだ。すごいね!うちのママは弁当なんて作ってくれないよ!スナックやってるから朝は起きてくれないもん。小さい頃から遠足もパンもっていってたから。」
真澄は寂しそうにいった。
あきらが 提案した。
「ねぇ!私もお弁当ないから食堂いかない?美香ちゃんも食堂でお弁当食べたら?」
三人は食堂へむかった。
…が、食堂の入り口で三人は立ち尽くしてしまった。
朝のラッシュよりも激しく混んでいて、しかも男の子ばかりだ。
「うそ……」
「マジ?」
「中見えない…」
後ろからもゾクゾクと男の子がやってきて、三人は流れに押されて中へ追いやられた。
「テーブルのほうにいこう!」真澄が二人の手をとり男の子たちをかき分けてテーブルまでたどり着いた。
空いている場所はなかった。
「ここや!ここおいで!」中野が手をあげて三人を呼んでる。
テーブルは10人は座ることができるものだったが、そこには中野、小山、友永の三人だけが座っていた。
周りのテーブルは満席なのにそこだけは空いていた。
「大阪のうどんには負けるけど、まぁまぁイケるわ」中野はうどんとラーメン、小山と友永はパンを食べていた。
美香はどうしてこのテーブルだけ空いているのが不思議だったが、それよりも友永が目の前に座っていることで、また胸が痛くなってきた。
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