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「わかった。石川…。先に保健室へ行け。その後で話を聞く。 お前らも教室へ戻れ!」
担任たちは友永、中野、小山の三人を順番に眺めてから食堂を後にした。
一回大きく深呼吸すると
急に力が抜けて、美香はしゃがみこんでしまった。
小山が美香の頭にポンっと手をかけて
「お前、すごいな。」
と言って美香を覗きこんだ。
「俺が保健室つれていくわ!立てるんか?」
中野が美香の手を引いた。
美香が立ち上がった時、中野から美香の手を引き離し友永が美香の手を握った。「行くぞ。」
そのまま友永は美香の手を引き二人は保健室へむかった。
「待ってや!俺も行く!」中野は片足を引きずりながら二人の後を追いかけ、小山は中野に肩を貸した。
最初からいきさつを見ていた真澄は苛立ちを露にしていた。
いつも男の子が真澄を目当てに寄ってきていた。高校に入って、まだ数日にも関わらず、何人もの先輩たちに声をかけられ人気があった。
中学時代もそうだった。
なのに自分が一番気に入っていた小山は真澄にそっけない。教室で中野が担任ともめて美香が抗議して以来小山は美香をよく見ている。それに真澄はお嬢様育ちというものを嫌っていた。
真澄は父親が女を作り出ていったため、母子家庭だった。また、母親が夜働いていたため母親の男と 一緒にいることが多かったが、その男によく殴られていた。 なので真澄は温かい家庭環境で育った美香を好きにはなれなかった。
これから真澄は、美香に一生忘れられないキズを残すことに手を貸してしまうようになる。
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