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美香は職員室にいた。
「石川…その怪我…本当のことを言いなさい。」
担任が難しい顔付きで尋ねてきた。
美香はいきさつを説明した。
「…だから…中野君たちじゃありません!上級生だと思いますが、はっきり顔も覚えていないんです。両親にもちゃんと説明するつもりですから、大丈夫です。」
「そうか…。ご両親にはよく説明しておいてくれ。 もう今日は帰りなさい。」
美香は先生方に軽く会釈をし、職員室をあとにした。
教室へ戻るとあきらが心配そうに駆け寄ってきた。
「美香ちゃん大丈夫?」
「うん。ありがとう。先生がいいって言うから、私これで帰るね!あきらちゃん、次は必ず先輩の話聞かせてよね!」
と美香はニッコリと笑った。
「ありがとう…」
あきらも笑いかえした。
真澄が美香の席に座っていた。
「帰るの?怪我大丈夫?はしゃぎすぎるからよ!」
真澄は美香のキズをみた。
(はしゃぎすぎって…) 少しトゲのある言い方が気になったが美香は礼を言った。
「そうだね。心配してくれてありがとう。」
真澄は何も返事をせずに自分の席に戻った。
「美香ちゃん帰るんか?ほな俺も帰ろかな?今日バイクで来とるっゆうたやろ?送ってくわ!!」
帰る準備を始めた中野の足を美香は心配そうに見つめた。
「この足気にしとんのか?大丈夫やて!事故りませんわ!」
「大丈夫!一人で帰れるよ!中野君は授業受けていて。」
帰宅準備をしている中野にそう言い、友永の席をチラっと見て美香は教室を出た。
校門を出て少し歩き出したとき、後ろから耳が潰れそうな轟音が近づいてきて、一台のオートバイが美香の帰りを阻むように目の前で停止した。
「乗れよ。」
夜叉が描かれた黒いヘルメットの男がそう言って、美香に同じヘルメットを差し出した。
「結構です…。」
美香は数歩後退りした。
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