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男はヘルメットをとった。
「小山くん…?」
教室にいると思っていた小山が目の前にいることにも驚いたが、それよりもエンジンの爆音とオートバイの姿に美香は動けなかった。
(何?これ… シートに背もたれ付いてる… それに、この音…)
言葉をなくして立ち尽くす美香に小山はヘルメットを投げた。
反射的に美香は受け取ってしまった。
「私…無理。乗ったことないし、免許持ってないし…無理でございます。」
圧倒されて美香は言ってることが自分でもよくわからなかった。
「おい、おい…ご…ございますって…?」
小山はオートバイのスタンドを立てながらゲラゲラ笑っていた。
「後ろに乗るのに免許なんか必要ないから…なんなら運転してみるか?」
小山は美香の反応が面白くて仕方なかった。
美香は少しずつ後退りしていた。
「ビビってないで…ほら!」
小山が手を差し伸べた。
美香は興味津々でオートバイに近づいた。
「どうやって登るの?」
小山は笑いながらステップを引き出した。
「ここに足かければ?」
美香は言われた通りにオートバイの左側から左足をステップにかけてバイクにまたがった。
「…?あの……」
美香は小山に助けを求めた。
「はははは!かける足間違ってんだよ!乗り直せよ。」
美香はオートバイの後方を向いて乗っていた。その姿に 自分でも面白くて二人は顔を見合せて笑いあった。
今度はちゃんと右足をステップにかけオートバイに乗った。
小山はまだ笑いが止まらなかった。
「じゃ、行くぞ。」
「待って!ちょっと待って!掴まっているところがないの!どこにつかまればいいの?」
小山の背中をポンポン叩くと振り返りながら小山は美香の手を自分の腰においた。 すぐにバイクは走りだした。
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