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発進した反動で美香は思わず小山にしがみついた。
しばらくはオートバイの音とスピードが怖くて目を開けられなかったが、慣れてくると流れる景色や肌をうつ風がとても気持ちよかった。
(すごい!風が気持ちいい。何かスッキリする気がする。)
通りを走っていたバイクは速度を落として、建設現場に入り停止した。
「友永に用があるから、少し待ってなよ。」
二人はオートバイから降り、小山が事務所のような建物に入った。
小山が中に入り少しすると何人もの作業員が出てきて美香を見てニヤニヤした。
「小山!お前が女連れてくるなんて珍しい。」
十代から五十代くらいの作業服を着た人たちが美香を囲んだ。
「あんた、どっちの女?」
「小山のだろ?アイツが女乗せるなんてありえないからさ。」
みんな口々に話している。
「あ…いえ、私は…」
美香が慌てて説明しようとした時、小山がきた。
「おい、女を囲んで何遊んでんだよ。仕事いけよ。」
そう言う小山の後ろにタバコをくわえた友永が見えた。
「俺、こいつ送ってくわ。終わったら来いよ。」
友永は小山の言葉にうなづき建設中のビルの中に入って行こうとした。
「待って。終わるまで待ってていい?」
なぜそんなことを言ったのか、美香は自分でも驚いた。言ってしまった後で¨門限どうしよう…¨ と一瞬考えてしまったが、それより友永と少しでも一緒にいる時間が欲しかった。
美香は友永の返事をまった。 友永は無言で仕事へ戻っていった。
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