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(行っちゃった…)
「俺んちで待つか?」
小山が優しく美香の肩を叩いた。
「え…?」
美香は小山を見上げた。
「アイツも仕事済んだら来るんだし、こんなとこにいつまでも居られねぇし。」
小山は美香にヘルメットを被せた。
建設現場の入り口から小山のバイクと同じくらいの爆音を響かせ、もう一台オートバイが入ってきて二人の前に停止した。そのヘルメットには小山のものと同じ夜叉が描かれていた。
中野だった。
「小山、お前…なんでやねん!なんで一緒にいるんや!」
中野は美香の肩に置かれた小山の手を見つめた。
「追うて来て正解やわ。美香ちゃん…俺、送るっゆうたやん。待っててや…」
「ごめんなさい…でも中野君、授業は?足は平気なの?」
美香はしゃがんで中野の足を触った。
「足なんかどうでもええんや!」
中野は美香の腕を掴み自分のバイクに向かっていった。
「あの…ちょっと待って…」
中野は全く聞いていなかった。
「こいつ今から俺んち来るんだけど。」
小山の言葉に中野が立ち止まった。
「美香ちゃん…ホンマか?」
うなずく美香を見て中野は小さく言った。
「俺も行くわ …。小山、この子は俺が乗せていく。ええな?」小山の返事を待たず、中野は美香を引っ張っていった。
二台のオートバイは小山の家に向かうため、建設現場を後にした。
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