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小山の家は閑静な住宅街から少し離れたところにあり、広い敷地に大きな家があり、脇にもう一軒家が建ててあった。
「小山君の家…? 広~い!それに大きいね~!」
美香は目を丸くした。
「コイツ、ぼっちゃんやからな!デカい家は親のんで、あっちの小ぶりな家が小山用やで!」
中野が説明していると小山が中野の背中を押した。
「くだらないこと しゃべんなよ…。入れよ」
二人は小山の後を追い、家に入った。
「好きな部屋にいていいから。」
小山は奥のキッチンへ入っていった。
「ここでええやろ?俺はいつもこの部屋使ってんねん!台所にいっちゃん近いからな!」
「まるで自分の家みたいね!」
美香の笑う顔を見て中野は急に真面目な表情を作った。
「なぁ…美香ちゃん、あんた彼氏とか好きな男とかおらんのか?」
美香の顔を正面から見るのが恥ずかしくて中野はうつむいたままで尋ねた。
「彼氏なんていないよ… そういうの、よくわからないもん。」
彼氏はいないが、好きな人は?と聞かれると脳裏に友永の顔が浮かんだが、友永を好きだとはまだ応えられなかった。
「そうなんや!俺も女…いや、彼女おらんねん!美香ちゃんはどんな男…人が好きなんや?」
また美香の心には友永が浮かんだが、
「よくわからない…」
と応えた。
小山が部屋に入ってきた。
「2時間ほど出るから。あとヨロシク。」
小山はそれだけ言って出ていってしまった。
「痛いのに…アイツもようやるわ…俺は絶対しとうないわ。」
中野はタバコに火をつけながら顔をしかめた。
「小山くんどこへ行ったの?」
「墨や。」
「そうなんだ!私も小さい頃から習ってて今は5段持ってるんだよ!」
美香が嬉しそうに話すと中野が美香の両手を握りしめた。
「アカン…ホンマにあんたはアカン…。可愛い子やで!墨っゆうても書道とちゃうんや! 体に入れる墨やん!入・れ・墨」
「…なんで?」
入れ墨なんて映画やテレビの中だけのものと先入観があった美香は自分の周りで現実にあることなのだと思いもよらなかった。
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