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曲が終わった。
「なぁ…もう一回ええか?」
二回目弾き始めた時、階段を登ってくる数人の足音が聞こえた。
三人の男の子が部屋を覗いた。
「へぇ…お前の女か?」
三人の中の一人が中野に話しかけた。
「小山のだろ?小山は連れの女であっても自分の家に入れたりしねぇし。ここに女いるってことは、小山のじゃん。」
もう一人の男の子が言った。
「おい!イランことばっかり言うてんなや!そんなんどうでもええやんけ。 美香ちゃんありがとうな。下行こか?」
中野は話を遮って美香を連れて階段を降りた。
最初にいた部屋に戻ろうとした時玄関の扉が開いた。
友永だった。
「ピアノ…お前か?」
「うん。…」
美香は友永を見つめたまま動けなかった。
「帰るぞ…」
友永は美香にそう言うと、もう一度玄関の扉を開けた。
「どうして?私…もう少し…」
待っていた友永とやっと会えた。美香はもう少し彼と一緒にいたかった。
「時計見ろよ。」
一言残して友永は玄関を出ていった。
時計は4時をさしていた。
(…門限… どうして友永君は私の門限知ってるの?)
少し首を傾げながら中野のいる部屋に向かった。
「中野君。私帰らないと…ありがとう。また明日ね… 」
「ちょい待ってや!俺送っていくから。一人でこんなとこから帰れへんで!」
玄関を出ていく美香のあとを中野は慌てて追いかけた。
外に出ると美香がバイクに乗った友永の方へ走るのが見えた。
(嘘やろ… 友永が女乗せるんか?小山も友永も…なんでや……)
「友永!俺が送るて約束しとるんや!」
叫んだ中野の言葉に美香は立ち止まり友永を見た。
「早く乗れよ…」
「中野君!ありがとう!また明日ね!」
オートバイの爆音に負けないくらいの声で中野に手をふり美香は友永の後に乗った。
美香の腕が 自分の腰にしっかり 回されているか確かめてから友永はアクセルを吹かし、大きな門を抜けていった。
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