出会い

8/11
前へ
/43ページ
次へ
三人は教室のある三階から真澄を先頭に階段を降りた。 すれ違う生徒は皆三人よりはるかに背が高い男の子ばかりで、150センチの身長の美香には学ランのボタンしか目にはいらなかった。 ロッカーは階段を降りた一階にズラリと並んでいる。 三人は自分の名前が貼られたロッカーを探した。 「あっ…高い…」 美香のロッカーは背伸びしてやっと鍵穴に届くところにあった。 それに気付いたあきらは 「美香ちゃん、何か取り出す時は私に言ってね。」 とニッコリ笑って言った。 「ありがとう!入れるのは靴くらいだし…でも困ったら助けてね!」 美香が言い終わる前に真澄が二人の間から顔を出した。 「靴くらいって…教科書は?体操服は?まさか毎日持って帰るつもり!?」 「教科書…学校に置いて帰るの?塾で使わない?」美香は真っ直ぐに真澄を見た。 「…じゅ…く?美香って塾なんか行ってるんだ!すっごい!やっぱ頭いいんだ。」 「うるさい。どけ。」 真面目な美香をケラケラ笑う真澄の後ろから声低い声がして 真澄を押し退けた男の子が美香のロッカーの真下のロッカーを開けた。 (この香り…さっきの?) 美香はしっかり彼の顔を見た。 白い肌に目尻が少し釣り上がった大きな目で、冷たく、つい先日まで中学生だったとは思えないような孤独を感じる眼差しだった。 「ごめんなさい…」 美香は一歩さがった。 「ちょっと あなたね! ¨どけ!¨ってそんな言い方ないんじゃない?」 押し退けられた真澄が大きな声で怒鳴った。 彼はちらっと真澄を見て、もう一度美香に視線をやり、無言で三人の前を通り過ぎていった。 「イラッとするよね!偉そうに!アイツ同じクラスにいたじゃん!明日文句言ってやる。さっ帰ろ!」 真澄は美香とあきらの腕をとり校門へむかった。
/43ページ

最初のコメントを投稿しよう!

32人が本棚に入れています
本棚に追加