ウェイターは脇役……のはず

52/58
6668人が本棚に入れています
本棚に追加
/555ページ
フロアに着くと、早速仕事を任された。 お盆にドリンクを乗せ、フロア内を巡回する。 「ひぃ」 後ろから声をかけられ振り向くと、そこには櫻李が。 「コーラ頂戴」 「ああ……どうぞ」 コーラを渡そうとしたら、目の前に櫻李の顔があった。 「………!?」 近すぎるだろ、と思ったその瞬間。 「いっ、!」 豪快に首筋に噛み付かれた。何でだよ。 そして痛い… 周りはお喋りの途中で、こちらを見向きもしていないから良かったものを。 「ちょっと…何するんですか」 小声で咎めるように言うと、櫻李は相変わらずの無表情。 さっき危うくお盆ごとひっくり返しそうになったんだぞ。 ギリギリそれは回避したけれども。 「何か変なもの見つけたから」 「変なものって……」 「マーク」 やっぱりか。 何でこうも、みんなはこのマークに反応するんだ。 「だからって噛み付く理由にはなりません!」 むしろどうやったらその考えに至るんだ。 「何かさぁ、所有物に傷が付けられるのって……すごく気に食わないんだよね」 「所有物って……」 そうハッキリ言われては、反論する気力も起きない。 俺はいつからあんたのモノになったよ。 「誰にやられたか……なんて、どうでもいいけどさ。気に食わないなぁ」 そこはどうでもいいんだ。 独占欲が強いんだか何だかよく分からないな。 「僕がさ。当ててあげようかー?」 そこで、可愛らしい声が聞こえてきた。 この声は…… 「副委員長……」 キュルンとした瞳をまん丸に見開いて、俺を見上げる副委員長がいた。 副委員長はこちらに歩いてくると、お盆に乗っているオレンジジュースを手にとって飲んだ。 オレンジジュースチョイスがグッジョブすぎる。 ストローで飲んでるのがまた可愛い萌え。 副委員長はジュースを飲むと、俺に向かってフフッと笑った。 その笑みに少し悪寒を感じたのは…気のせいだと思いたい。
/555ページ

最初のコメントを投稿しよう!