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「何で気の迷いだと断言できるんですか。我が子の言葉を、まず否定するなんておかしいとは思わないんですか?」
「…………うるさい。口出ししないでって、さっきから言っているでしょう」
「あなたは今まで、斗羽くんが兄じゃなくて自分が後を継ぎたいと、心狭い思いをしていると言っているのを聞いたことがあるんですか」
「そんなこと、言うわけないじゃない。この子は優しくて、ちょっぴり引っ込み思案なの。そんな愚痴、言えるわけない」
おばさんは斗羽くんの肩を抱くと、優しい手付きで撫でた。
斗羽くんは表情を歪め、拳を握りしめる。
「言えるわけないだなんて、何故断定できるんです?今まさに斗羽くんは、自分の意見を懸命にあなたに伝えているじゃないですか」
どうしてこの人はそれが分からない?
斗羽くんの心の叫びを聞いてやろうとしない?
斗羽くんの為を思って、良かれとしている行動が斗羽くんを傷つけているのが分からないのか?
………この人はどうして、こんなに必死になっているのだろう。
するとそこで、今まで黙っていた斗羽くんがおばさんの手を払いのけた。
「斗羽……?」
困惑するおばさんに向き、斗羽くんは意志の強い瞳でおばさんを睨んだ。
「母さん。もう一度僕の本音を言う。僕は、後継ぎの問題なんてどうだっていい。家族みんなで仲良く暮らしたい」
「斗羽―――……」
今までにない斗羽くんの姿に、おばさんはたじろいた。
尚も斗羽くんは目線を逸らさず、目で訴えかける。
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