ウェイターは脇役……のはず

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「輝さん!」 「山田!!」 ………え? 斗羽くんの声と別の声が重なった。 こんな呼び方をするのはただ一人、 「会長!?」 「兄さん!?」 まさか会長が来るとは思っていなかったが。 会長は焦ったように俺のもとへ駆け寄ってくる。 「………紗代、やってくれたな」 やけに低い声が、今この空間に響き渡った。 え…と驚く前に、俺は会長によって抱きとめられた。 どうやら足元がふらついたらしい。 しかし今はそんなことよりも、起きている事態を整理するのに精一杯だ。 「天王寺……さん、」 ぶっちゃけおばさんのことも天王寺さんって言っているから区別がつかないが、今俺が呼んだのはおじさんの方だ。 そう、この場にやって来たのは会長のみではなく、おじさんもだった。 「………あなた、私は当然のことをしたのよ!悪くないわ」 おばさんはまさか2人がここに来ると思わなかったようで、酷く動揺したように忙しなく視線を漂わせる。 ここまでくると、おばさんも事態の行方が怪しいことに気付いたようだ。 「……紗代、お前はもうやりすぎだ」 おじさんはゆっくりとした動作で歩いておばさんの方へと歩いていく。 紗代、とは当然ながらおばさんのことだろう。 「な…に、よ。私は家のことを考えて…」 「商談で不正を働いても、か?」 「――――!!」 おばさんの弁解を遮り、おじさんが静かに言った。 その場が凍りつき、一瞬時が止まったかのようだ。 俺自身もいまいちこの状況がよく分からないが、おばさんが何かしらの不正を働いた可能性がある… そしてそれが、かなりの致命傷だということは分かった。 「なに言って…!」 反論しようとするおばさんの前に、おじさんは懐から取り出した紙をぴらりと見せる。 「これは、紗代が今までにしてきた不正行為の数々だ。裏取引に賄賂、その他諸々……身に覚えがあるものばかりだろう?」 「っ、」 「証拠だってある。君の商談相手からの苦情だって届いているんだ」 「…………そんな」 おばさんはこの世の終わりかのような顔で膝から崩れ落ちた。
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