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「おかげで今日実演を見ていた参加者は、こぞって湯タンポが欲しいと言って買っていってくれた。その工場と契約を結んでくれる会社もいくつかでた」
どんだけ。
たったあれだけで、その工場の運命が変わるほどの効果が出たなんて。信じられない。
「もうすぐで君は、……いや私たち天王寺家は、法に裁かれてしまうところだったんだ」
おじさんは真っ直ぐおばさんを見つめ、訴えかける。
「君が今まで犯してきた罪が、どれだけのことか……分かるか?」
咎めるような口調。それにおばさんは怖がるようにピクッと反応した。
おじさんを見て、口をパクパクさせる。何かを言おうとしているが、声にならない。
もうどうすればいいのか分からない。
混乱と焦り、不安に恐怖。それが渦巻いて脳内はキャパシティオーバーしているんじゃないだろうか。
それでも懸命に口を動かし、今にも泣きそうな声を搾り出した。
「私、は…!」
「ああ。分かっているよ。君が天王寺家のために、私を支えるためにやっていたことも。そして何より、斗羽を幸せにしようとするためにやっていたことも」
おじさんはそこで悲しそうに微笑み、おばさんをふわりと抱きしめた。
「だけど私は、君にそんなことして欲しくなかった。犯罪行為なんて、やって欲しくなかったんだ。なんとしてでも止めたかったが、君は巧みに証拠を残さなかった…」
「………」
おばさんがどんな表情をしているのか分からない。
俺たち子供組は、ただ成り行きを黙って見守る。それに徹するだけ。
「―――君の苦しみを察してあげられなかった私の責任でもある。悪かった」
「……………っ!」
その一言は、おばさんの心に大きく響いたようだった。
肩を小刻みに震わせ、今にもわっと泣き出しそうだ。
しかし涙を見せたくないからか、懸命に堪えているようだった。
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