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「君が私に近付いてきた来たとき……すぐにでも察してあげるべきだった。
好きでもない男に媚びを売るなんて……ましてや股を開くなんて、苦痛でしかたなかっただろう?」
え……。
おじさんの言葉に、俺も会長も斗羽くんも驚いたように、お互い顔を見合わせる。
好きでもない男に…?
「あ、なた……………気付いて…!?」
おばさんは動揺を隠せず、おじさんを凝視する。
「ああ。と言っても、気付いたのは紗代が妊娠したときだったよ。
私には目もくれず、ただ斗羽を産むと言ってきかなかった君を見たとき、この人は端から私になんか興味が無いんだって思った」
「…………そんな…」
「今まで辛かっただろう?ごめんな」
「――――っ!!」
おじさんがおばさんの頭を優しく撫で、謝罪の言葉を述べた途端。
おばさんは堰(せき)を切ったように泣き始めた。
俺たちは、その様子を黙って見守っていた。
会長は複雑そうな表情で、何かを考え込むように。
斗羽くんは泣きそうになるのを堪え、おじさんとおばさんから目を逸らさない。
俺は…………
アルコールが回って少しボーッとしていた。
頭はまだ正常に働いているので問題ないが、この濡れた制服をどうにかしたい。
ワインの匂いがプンプンして、それも相乗されて酔いそうになる。
―――でも、この状況に決着がつく場面をこの目で見たかった。
「……今からでも良い。君の過去の苦しみ、今の苦しみを…吐き出してくれないか?私が全部、受け止める」
おじさんがこんなに格好良いなんて、何てギャップなんだろう。
こんな人だから、会社も担うし人望も熱い。
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