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「あなた、迷惑をかけてごめんなさい。どうやら私は、周りが何も見えていなかったみたいだわ…。今までの裏取引は、全部私が責任を持って処理する。そして全て終わったら…、私は天王寺家を去ります」
今までありがとう。そしてごめんなさい。
小さな声でそう言うと、おばさんは深く頭を下げた。
「そんな……、何言ってるの母さん!」
「斗羽、あなたは天王寺家の息子。幸せに暮らしなさい」
「母さん!」
おばさんはとても穏やかな笑顔で斗羽くんの頭を撫でた。
斗羽くんは首を横に振って、嫌だと言う。
しかしおばさんはただ微笑むだけだった。
自分でけじめをつけて、天王寺家を一人で去る気だ。斗羽くんを残して…
こんなこと、俺が言っていいのか分からないが…
「子供を置いて去る親……あなたは、同じ事を繰り返すんですか」
「山田…」
あのね。こんなシリアスなムードなのになんで会長は山田なのかね。せめてここだけでも空気読めよ。
「確かに私は…私の母親と同じ事をしている。そしてそれがどれだけ子供にとって辛いことかも、自分自身十分分かっている。
でも私といても、斗羽には辛い思いをさせるだけ……。だったら裕福に暮らせる天王寺家に居る方が、絶対幸せなの」
おばさんは静かに、そして諭すように言った。
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