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「そんなことない!僕は、母さんのおかげでここまで順調に育ってきたんだ…!」
「………斗羽、でも私は、」
「紗代。輝くんの言う通りだよ。君は両親と同じ過ちを繰り返そうとしているだけだ」
おばさんが斗羽くんに大して悲しそうに眉を下げていると、おじさんが口を開いた。
「あなた…。でも私は、もう取り返しのつかないことを…」
「誰が一人で全部背負えと言った?」
「――――え…」
おじさんの言葉に、おばさんは目を丸くする。
そこでずっと黙っていた会長が言った。?
「今でもあんまり好きじゃねぇけど……、それでもあんたは俺たちの母親だ」
「きよ、かず…」
まさか会長からそんな言葉が出てくるとは思わなかったのか、おばさんは信じられないと会長を凝視していた。
会長が、おばさんを自分の母親だと認めたということか…。
「紗代、君は一人じゃない。家族というものは、みんなで家族だろう?」
「あなた…」
「君が今まで背負ってきた苦痛は、とても言葉では言い表せないものだ。でも私は、そんな君の心の傷を少しでも癒したい」
「……っ、」
おばさんは口に手を当て、嗚咽を漏らす。
「紗代は、れっきとした天王寺家の一員だ。家族の問題を、家族みんなで解決しないでどうする?」
「………ぐすっ…」
「大丈夫だ。君の不祥事は、私の手にかかれば思ったほど大したことじゃない。心配するな」
だから、とおじさんは笑った。
「どこへも行くな、紗代」
「………あああああっ…!」
おばさんは声が枯れるまで泣いた。
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