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……これで、会長の問題は心配なさそうだな。
「よかった…」
俺が介入したことでどうなるかと思ったが、良い方向に転んで良かった。
そう思えば、このぶっかけられたワインなんてどうってことない。
「……山田、お前着替えに行くぞ」
話も一段落ついて、ホッとしていると会長が俺を抱き上げた。
「え、ちょ。何してんすか会長!?」
「お前さっきから足元がおぼついてねぇの…気付いてるか?」
そりゃ、フラフラするとは思っていたが。
「だからって、別に抱き上げる必要ないでしょ……。俺一人で歩けますから」
「行くぞ」
「人の話を聞けええぇぇ!」
ああ、駄目だ。
怒鳴ったせいでクラクラする。もうこのワインの匂いも気持ち悪い。
「坂月さん」
会長に連れ去られようとしたとき、背後から声をかけられた。
会長が振り向いて、俺は声の主と対峙する。
そこにはおばさんが、頭を下げていた。
「天王寺……さん…?」
「先程は、失礼なことをして申し訳ありませんでした。私、あなたにとんでもないことをしてしまった…。許してもらおうなんて思っていないけど、ごめんなさい」
震える涙声でおばさんは声を搾り出す。
「………いいですよ」
「坂月さん…」
「そりゃあ腹が立ってないって言ったら嘘になりますけど。でももう、それは過ぎた話なんです。結果が良ければいいじゃないですか。……なんてね」
俺は苦笑しておばさんを見た。
「ま、要は格好良く去りたいだけなんですけど。ってことで会長、降ろしてください」
「駄目だ」
「降ろせっての」
何でこんなに頑ななのか。俺は恥ずか死するぞ?
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