ウェイターは脇役……のはず

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―会長視点― 俺は山田を担いで控え室に入った。 そこには幸い誰もいない。今は働き時だから全員出ているのだろう。 俺は部屋に入って鍵を閉める。 深い意味はねぇが、こいつの着替えてるところを他の奴の目にさらすのは気に食わねぇ。 山田を椅子に座らせ、メイドを呼び出す。 タオルと着替えを持ってくるように指示すると、すぐに用意される。 相変わらず俺のところのメイドは優秀だ。 「おい山田。このタオルでまずその頭を拭け」 「ういーす…」 俺の寄越したタオルを受け取り、山田は頭を拭き始める。 おいおい、あれじゃあただ頭にタオル乗せてるだけじゃねぇか。 「山田、しっかりしろ。お前な、飲んだわけでもねぇのに…」 いつもしっかりしてて冷静な山田のこんな姿を見られるなんて、それはそれで新鮮かもしれねぇがな。 俺は山田からタオルを奪い、ワシワシと拭いてやる。 「わっ、ちょっと会長、乱暴ですね」 「うるせぇ。山田がしっかりしねぇからだろ」 ……ん?そういやこいつ、ウィッグしてたよな? 「おい、お前そのウィッグ新しいのに代えたら良いんじゃねぇのか?」 「……おおー、その手がありましたね。会長頭良いー」 駄目だこいつ。完全にほろ酔いじゃねぇか。 メイドに予備のウィッグを持って来させ、それを山田に被せた。 「ねぇ会長ー…。俺、何だかふわふわします…」 「ワイン被ったからだろ。お前そんなに酒に弱いのか」 「へへー、飲んだこと無いから分かんないです」 そう言って山田は俺に擦り寄ってきた。 「……っ!?」 突然のことに俺は驚いて動きを止める。 山田は気持ち良さそうに笑みを浮かべ、俺の腹辺りに頭を擦り寄せる。 こいつ……っ!
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