ウェイターは脇役……のはず

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「あーなんか気持ち良いですねー」 山田は顔を上げるとふにゃりと笑った。 「…………」 何なんだこいつ。こんなに可愛かったか? 動揺する俺なんかお構いなしに山田はまるで懐いた猫のようにスリスリしてくる。 つい、猛烈に可愛く見えて顎を優しく撫でてしまった。 「……あ、それ気持ち良いー」 「うっ…!」 何だこの小動物は…! 駄目だ。理性を保て。 いくらなんでもこいつと猫を重ねるなんてありえねぇ。 くそ、俺が拾った野良猫のモコとクウに最近会ってねぇからな… 猫分が足りねぇ。 いまだ抱きついてくる山田を引き剥がして椅子に座らせる。 山田は不満そうに口を尖らせた。 今酔ってて顔がほんのり赤いのに加えそんな顔するとは…… 「そうか。お前は俺に襲って欲しいのか」 「は?んなわけないじゃないですか」 真顔で言われた。 おい。さっきまでのほろ酔いはどこいった。 とりあえず着替えさせるためにも、俺は山田のベストのボタンを外す。 「ったく、俺様にこんなことさせるなんてテメェだけだぞ」 「んー…。じゃあやらなきゃ良いじゃないですか」 「可愛くねぇ奴だな。お礼ぐらい言え」 「あざーっす」 「お前な…」 呆れてため息しか出ない。 ベストを脱がすと、今度はカッターシャツだ。 そういや、こいつの素肌ってあんま見たことねぇな。 前の旅行のときも一切海に入らずに砂山作ってたし。 頑なに見せようとしなかったから何かあんのかと思ったが… ま、抵抗も見せねぇし良いか。 本人が酔ってて事態収拾ができていないってのもあるけどな。
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