ウェイターは脇役……のはず

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しかしそんなはずはない。俺が今まで気付かなかったなんて、そんなの… ああ、動揺しすぎて頭がどうにかしそうだ。 目の前の現実を受け入れられず、山田に恐る恐る尋ねたわけだが。 「………」 返事がない。 「山田…?」 おかしいなと思い見下ろすと、そこにはスースーと気持ち良さそうに眠っている山田がいた。 ………………。 とうとう眠気に負けたらしい。どんだけ弱いんだこいつは。 それよりも、今突きつけられている事態をどうにかして… 「ふー。つっかれたー」 「とにかく控え室で休憩しましょうよ」 「!?」 扉の外で会話が聞こえた。 どうやらウェイター達は休憩時間に入るらしい。 「…あれ?開かないぞ…」 「え?本当ですか?」 まずい。 ガチャガチャと回るドアノブを見て焦る。 このまま閉めていて大事にでもなったら、それこそ面倒だ。 だが、今ここで扉を開けてしまったら… チラリと山田の顔を見る。 こいつが女だってのが、この場に来る全員に知れ渡ってしまう。 「チッ…」 俺は山田にバスタオルをかけてから横抱きに持ち上げ、足早に扉の方へと向かった。 「あ、開いた……って、え…?」 「どうしたんですか?……ああ!」 ウェイター達は俺を見るなり、顔を青ざめさせた。 「て、天王寺様…」 「どうしてここに…」 俺を見上げ、ポカンと口を開いて硬直している。 「ああ、ちょっとこいつが体調悪くてな…。悪いが、やま……坂月は早退させるぞ?」 「は、はい!」 「チーフには言っておきます!」 よし。これでこの場は切り抜け… 「んー?俺が何だって?」 「あ、チーフ」 足早にここを立ち去ろうとしたら、目の前に山田の担任が立っていた。
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