ウェイターは脇役……のはず

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―輝視点― ああ、ふわふわ。クルクル。 頭がボーッとしてまるで空でも飛んでいるような気分で。 気がついたら寝ていた俺は。 今現在、窮地に立たされていた。 「………で。どういうことか、説明してもらおうか山田」 「…………」 気持ちよく寝ること約30分、すっかり酔いが醒めた俺は目を覚ました。 そして俺を見下ろすようにベッドに腰掛けていた会長が、大丈夫かと声をかける。 何とか大丈夫ですと返して起き上がり、俺は絶句した。 何てったって、下を見るとサラシが丸見え状態だったからだ。 これは、つまり。そういうことで。 ごちゃごちゃする頭を整理して、事の経緯を辿っていく。 ほろ酔い状態だった俺の記憶はしっかりあるため、容易に状況が理解できたのが何とも悲しかった。 何してんだ、俺。 目の前には険しい顔をした会長。 完璧にバレた。 「黙ってねぇで、答えろ。何でお前は男装して男子校に入学したんだ」 会長特有の迫力で、俺は竦んでしまう。 どうやってこの状況を切り抜けたら良いのか。 下手したら、いや上手く言い訳を考えたとしても退学させられるかもしれない。 だって会長様だもの。この人そういう権限持ってるもの。 「………お前は、俺たち財閥を目当てに…学園に来たのか?」 悶々と考えていると、会長の小さな声が耳に飛び込んできた。 「は?財閥目当て?………って、うわっ!?」 キョトンとしていると、いきなりベッドに押し倒された。 「ちょ、かいちょ……!?」 「で、どうなんだ」 突然何をするんだと非難の声をあげようとしたら、会長がそれを遮った。 「どうなんだって………、」 「お前は、財閥の息子である俺たちに近付くためにわざわざ性別を偽って学園に入ったのか」 会長は苦痛に表情を歪め、俺を見下ろす。 俺は俺で、何言ってんのこの人?と言わんばかりに首を傾げた。 「……何勘違いしてるのか知りませんけど、別に俺は会長なんか手玉に取っても良いこと全然ありませんよ?むしろ関わんなって感じです」 今度は会長がキョトンとする番だった。 うお、その顔撮ってもOK?← 「俺金持ちになんかなりたくないんですよね。色々と面倒だし。庶民のが断然心地良いし」 真顔で淡々と語っていると、会長はポカンと口を開けたまま固まった。 それでもイケメンだから、問題なしだが。
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