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ザザ-・・・
(チクショー・・・。雨かよ・・・)
その日、俺、佐山和樹は塾の帰りだった。
10km離れた進学塾から、電車で家に帰っていたが、俺の住む、『大師町』に入った途端に雨が降り出した。
今日の天気予報は晴れ。もちろん、傘など持って居ない。
災難だ。
もちろん、大師駅に着いても止むはずも無く・・・。
少し、憂鬱な気分で俺はホームに降り立った。
現在時刻、22:45。
タクシーも割増料金になるから乗る訳にも行かない。そもそもこんなド田舎の駅でタクシーなど拾えるはずも無いし、第一に俺は高校生だ。タクシー料金はさすがに財布に厳しい。
そんなこんなで駅舎に入ったら、見覚えのある顔が見えた。
――大沢美奈
俺の幼なじみにして俺の元好きな人―――いや、今は好きじゃないと言ったら嘘になるか。
何せ高校に入ってからは一度も口を利いた事が無い。
まあ、一年も経てば気持ちも薄らぐものなんだな。
結局、俺に声を掛ける勇気も無く、改札を出た。ヘタレな性格を恨みながら。
昔とは違う。こうも思いながら。
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