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【 プロローグ 】
12月24日。
クリスマスイブ。
日本中の恋人達が胸をときめかせ心を躍らせている頃……。
………ある事件が起きた。
待ち合わせ時間に遅刻し急いでいた私の彼が道路に飛び出した瞬間…
死角から現れたトラックが私の目の前で彼を5メートルくらい吹っ飛ばしたのだ。
彼が待ち合わせ場所に向かう途中に起きた一瞬の出来事…
まるで私は地獄の淵に立っているような気がした。
急いで彼の元へ駆け寄り…
倒れている彼を優しく支えあげた私だったけど…
彼の服にはジワジワと血が染みだしてきていた。
トラックに気がついて咄嗟に衝撃を和らげようと体の前に出した両手は…
折れているのが言わずとも分かるほど痛々しく曲がっていて……
内臓も損傷しているのか…
まるで咳き込むかのように口から血を吐いていた…。
まさに…
生々しい凄惨な状況だった。
『あ…彩ッ…俺……まだ死にたくねぇ……』
彼は今にも消えそうな声で…
私に“生きたい”と訴えかけていた。
だけど私は怖くて何も出来ず…
彼の傍で泣いていることしか出来なかった。
いつの間にか誰かが呼んだようで救急車が来て…
彼は病院に運ばれたが……
救急隊員の懸命な処置も虚しく…
病院に着いた時には彼の命は消え…
私の最愛の人が天国へと旅立った瞬間だった…。
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