1.災いの予兆

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一方…水蓮は黙々と歩いていく葵に疑問を投げ掛けていた。 「ちょ…お頭!!一体どうしちまったってのさ!?仕事を中途半端にするなんて、お頭らしくないじゃないか…。」 「らしくない…か。確かにお前にはそう見えるのだろうな。だが、よく考えろ水蓮。あの男の命を狙ったのは何者だったのかを。」 「へ?確か、お頭は伊賀忍だろう…みたいな事言ったような…。」 振り向いた葵の顔には緊張感が漂っている。彼女は昨晩鷲峰邸を襲撃してきた相手の事を思い出し、暫く考えた後に静かに自分の考えを口にした。 「その通りだ。そして忍が他者を狙う時…それは仕事であるか、邪魔者を消すかのどちらかしかない。仕事であれば問題はないが、後者であれば話は違ってくる。」 「後者…邪魔者を消す…って、そうか!!」 「気付いたか?その場合、鷲峰は何らかの形で甲賀に関係している可能性が高い。そんな奴に依頼された仕事をしてみろ、伊賀と甲賀のいざこざに巻き込まれかねん。」 最悪の場合を想定し、葵は風魔の里を守るため鷲峰との契約を白紙に戻したのだ。 先を見据えた長の判断…ようやく合点が行ったのか、水蓮はなるほどと頷く。 「流石はお頭だね。あたしは言われるまで考えもしなかったよ。」 「私の考え過ぎかも知れんがな。まぁ、用心するに越したことは無い。」 そして葵は『話は終わりだ。』と言い再び歩き出す。 一刻も早く里に帰ろう。帰ればきっと、この不安な思いも消えるだろう。まるで自身に暗示をかけるように何度も何度も心の中で繰り返しながら…。
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