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鷲峰の屋敷での一件以来、葵は考え込むことが多くなり、その他にも伊賀や甲賀の動きをよく探るようになった。
何故そんな事をするのか…気になった水蓮は、ある日思いきって葵に尋ねてみた。
「…そうだな。古い友人の事が気掛かりになった、という所か。」
「古い友人?前に言ってた伊賀の知り合いの事かい?」
…と水蓮が興味津々に聞いていると、庭の方から突然声がかかる。
「水蓮、そのへんで止めておけ。下手な詮索をするのは忍らしからぬ行動だぞ?」
「焔ぁ!久しぶりだね、いつ帰って来たんだい?」
何時の間にか庭に立っていた男…名を焔(ほむら)と言う。水蓮と同じく葵の腹心であり、風魔の里のブレーン的存在である。
「あたしに会えなくて寂しかったろ?甘えてもいいんだよ?」
「寝言は寝てからにしろ。…頭領、ただいま戻りました。」
「ご苦労だった。」
冗談を真顔でかわされた水蓮がむくれるのを余所に、焔は淡々と葵への報告を始める。
真面目を地で行く焔と、いつも飄々としている水蓮。こう見えても、この二人の組み合わせはこの里最強のタッグだ。
「で、焔。あんた一体何を連れて帰って来たんだい?」
「何!?」
水蓮の声からふざけていた雰囲気が消え失せ、それに気付いた焔が慌てて後ろを振り返る。
そこに立っていたのは、この里では見た事のない男の姿だった。
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