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突然の来訪者に風魔の手練れ二人は慌てふためいているが、彼はいたって涼しげな顔で葵に向かって手を上げてあいさつをしてみせた。
「よっ、小太郎。」
「久しいな、半蔵。」
「十二年ぶり…かな?元気そうで何よりだ。」
見知らぬ男は、どうやら自分達の頭領の知り合いだったらしい。二人はそれを悟って少しだけ緊張を緩める。
冷静になって考えれば、葵が呼んだ『半蔵』という名には覚えがあった。
「頭領…この方はもしや…。」
確認するように焔が声をかけると、葵は何も言わずに頷いた。
「そう、俺の名は服部半蔵(はっとりはんぞう)。伊賀忍の頭領だよ。小太郎とは古い知り合いなんだ。」
伊賀忍の頭領が直々に風魔の里に出向くなどと、誰が想像出来ただろうか。
水蓮も焔も言葉を失っていると、そんな事は気にする様子も見せずに二人は話を続けていた。
「それで、何用だ?伊賀からわざわざお前が来るとは…よっぽどの事があるんだろう?」
「あ~。その前に一ついいか?」
「何だ?」
「一応礼儀として呼んだが、半蔵・小太郎ってのはやめようぜ。俺とお前の仲だろ?」
葵が風魔の頭領として『風魔小太郎』の名を継いだのと同じく、彼は伊賀の頭領として『服部半蔵』の名前を継いでいた。
葵は少しだけ考えたあと、微苦笑を浮かべて彼の本当の名を口にする。
「わかった…隼人。」
本当の名を呼んでもらえたのが気に入ったのか、隼人はニコニコと笑って座敷へ上がった。
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