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「ちちうえー!どこにいるの?」
幼い葵は、父である先代の風魔小太郎に連れられて何度か伊賀の里を訪れていた。
決まって父親は先代の服部半蔵と話をするので、一人になった葵の相手をしてくれるのは同じ年頃の半蔵の息子…隼人だった。
「葵ちゃん。お父さん達が帰ってくるまで、俺と遊ぼう?」
父親の姿が見えず不安になってベソをかいていると、いつも隼人が面倒を見てくれた。
かくれんぼやままごとをしたり、時には二人で忍術の訓練などをして時間を潰す。
そんなある日の出来事だった。
「…隼人くんは、大きくなったら何になるの?。」
突然そんな事を聞いてきた葵に、隼人はきょとんとしている。
なぜか不安げな表情の彼女は縁側に腰かけてパタパタと足を遊ばせていた。
「何かあったの?」
「私ね、大きくなったら風魔の頭領にならなきゃいけないんだって。」
隼人は葵の隣に腰かけると同じように足を遊ばせ、彼女の次の言葉を待っている。
「頭領になんか…なれるかな?私そんなに強くないし。」
「なれるよ、きっと。葵ちゃんなら絶対大丈夫だよ。」
沈んでいる葵を安心させるかのように隼人は笑っていた。その屈託のない笑顔が不安でいっぱいの心を溶かしていく。
「俺も大きくなったら伊賀の頭領になるんだ。だから一緒に頑張ろう。ね?」
そう言って小指を差し出す隼人。それでもまだ少し不安そうな葵は、おずおずとその小指に自分の小指をかけた。
「まだ不安なの?」
「…うん。だって頭領って強くなきゃいけないし、危険なお仕事だってちちうえが言ってたもん。」
そんな風に言って俯く葵に、隼人はしばらく考え込んでからこう言った。
「じゃあさ、俺…もっと強くなって葵ちゃんを守るから!!だから怖くないよ。頑張って二人で頭領になろうね。」
「うん…約束だよ!!」
二人は笑い合って指切りをした。
それが隼人と葵の…遠い日の約束。幼き日の思い出だった…。
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