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人が忍の存在を忘れ、進歩した科学が席巻する昨今。
それでも息を潜めるかのように、忍の技や生業は受け継がれていた…。
「葵姉さま!!」
古い日本家屋の座敷に甲高い子供の声が響く。窓際に座り外を眺めていた人物は、その声にゆっくりと振り返った。
その瞳が怪訝そうにひそめられたのを見て、声をかけた…年の頃は十代半ばくらいの少女が『しまった！』と言うような表情を浮かべた。
「何事だ、騒々しい…。それと私の事は頭領と呼べと言ってあるだろう？」
「…ごめんなさい。」
まるで叱られた仔犬のようにシュンとする少女を見て窓際の女性が苦笑いを浮かべた。少しキツく言い過ぎたと思ったのか、優しい声色で後を続ける。
「もういい。次から気をつけなさい。それで、渚。何用だ？」
渚…と呼ばれた少女は、思い出したかのように顔を上げる。先ほどの様子とはうって変わって、明るい声で話はじめた。
「お仕事を頼みたいってお客様が来てるの。いつものお部屋にお通ししたよ。」
仕事…と聞いた瞬間、窓際の女性の表情が一変する。例えるなら、触れたら切れてしまいそうな…鋭い刃にも似た気をその身にまとう。
「すぐ行く。今暫くお待ちいただくようにお伝えしろ。」
「はぁい♪」
ドタドタと廊下を走っていく渚を見送ると、彼女はゆっくりと立ち上がり部屋を後にした。
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