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三日後、葵と水蓮の二人は依頼主の会社を訪れていた。
見上げれば首が痛くなってしまうほどのビルに、思わず水蓮が感嘆の声を上げる。
「見事なもんだねぇ。で、一体何の会社なんだい?」
依頼主がどんな人物かも知らずに来てしまう水蓮。胆が座っていると言うか、何と言うか。
さすがの葵も、これには苦笑いを浮かべるしかない。
「お前はそんな事も知らずに来たのか?事業は手広く展開しているが、電子機器等に使う半導体の生産が主な仕事らしい。…さぁ、行くぞ。」
子供のようにビルを見上げ続ける水蓮を置いて葵が歩き出すと、慌てて彼女は後をついてくる。
受付でアポイントの確認をされ、最上階にある社長室へと通された。
「社長、お客様が到着されました。」
「待ちかねましたぞ。ささ、こちらへ。」
部屋の中には先日里に来た男と、恰幅のよい男が待ち構えていた。勧められるままに葵はソファーにかけ、水蓮がその隣に控える。
「私が社長の鷲峰(わしみね)です。いやぁ、まさか風魔小太郎殿がこのように美しい女性だったとは。」
「女だとて、依頼はしっかり果たす。依存はなかろう?」
鷲峰の舐めまわすような視線に悪寒を感じながらも、葵は報酬分の仕事は果たすことを宣言した。
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