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次の瞬間、風を切るような音と共に葵の喉元を切っ先が掠める。
難なく相手の一撃を避け、お返しと言わんばかりにみぞおち目掛けて突きを繰り出すが、相手もそれをさらりとかわしてみせた。
「ほう…少しは出来るようだな。ならばこれはどうだ!!」
男の声と共に、前に突き出した手から炎が放たれた。…それは紛れもなく忍が使う技、忍術。
葵は避ける素振りも見せず、微動だにしない。そんな彼女を見て鷲峰の顔から更に血の気が引いていった。
「ひ…いっ!!」
「騒ぐんじゃないよ。あの人を誰だと思ってんだい。風魔一の忍術の使い手、風魔忍の頭領だよ?」
と、水蓮。その表情には自信が満ち溢れているのが見てとれる。
その証拠に、炎は『バシッ』という大きな音がして葵に触れる前にかき消されてしまった。
「ふん、まるで蝋燭の炎だな。」
「な…にっ!?俺の火遁が消されただと?」
自分の技に自信を持っていたのか、男の口から驚きとも取れるような声色で言葉が発せられた。
「本当の忍術とは、こういうものだ。」
空気がビリビリと振動したように感じ、鷲峰が葵を凝視した次の瞬間…光の束が侵入者の足元を焦がし、被っていた覆面の布を切り裂いた。
「これは雷迅の術。それにこの術の威力と正確さはもしや…風魔の雷神か?」
「いかにも。」
驚愕の表情を浮かべる男とは裏腹に、葵は形のよい唇の端を引き上げて笑っていた。
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