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「主よ、そなたが名は黒祷 薫で間違いないかの?」
ちんちくりんな幼女が言った。
背は120センチくらい。
年はちんちくりんな背丈から推測するに十歳未満。
白髪みたいな銀髪をポニーテールにしていて、顔立ちは口調の割に外人のそれだ。
多分、可愛いのだと思う。
きりっとつり上がった目尻も、すっと伸びたまつげも、その奥で強く光る紅の眼も、これだけ小さな顔に収まっていながら決して小さい訳ではなく、そのくせ個々のバランスが整っているので、同年代はおろか、十歳年上だろうと引けを取らないような容姿淡麗さ……の、ような気がする。
どうにも断言出来ずにいるのは、この幼女は顔の左半分しか見て取る事が出来ないからだ。
右目は眼帯をしているのだが、この眼帯が大きいのか少女がちんちくりん過ぎるのか、右の大部分を覆い隠してしまっている。
これがまた妙に禍々しい。
まるで何か凶悪なモノを鎮め込んでいるかのような異質な雰囲気を纏い、見たこともないような鉱石で作られている。
眼帯の中心には金属製のロザリオがはめ込まれ、その重さに布では耐えきれないと判断したのか、紐の代わりに鎖で眼帯は絞められていた。
身に着けているのは黒い着物。
刺繍は一切されてなくて、帯は血に濡れたような真紅だ。
フランス人形を想像してみてくれ……あぁ、銀髪でポニーテールも忘れずにな。
んでもって、そのフランス人形の服を剥ぎ取り、黒い着物を着せてみて欲しい。
完成度を重視するなら帯の色も重要だ。
紅。
赤ではなく、血に濡れたような真紅。
想像出来たか?
後は、十字架のはめ込まれた、出来るだけ禍々しい眼帯を想像してそのフランス人形の右目に装備させりゃあ良い。
その出来上がった想像こそ、俺が今見ている現実さ。
どうだ、"人間になんかこれっぽっちも見えないだろう?"
当たり前だ。
想像したのは人形なんだから。
だが、そんな事は分かりきった上で、俺は外人ではなく、人形という素材を選んだ。
理由は単純にすぎて明快。
どうみたって、目の前のちんちくりんは人間じゃないからだ。
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