0話~誰か嘘だと言ってくれ~

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つかさ、もう良いだろ? 俺、立派に役目を果たしたよな? 正直、我慢の限界なんだよ。 俺は、思いっきり息を吸い込んだ。 「――――ぅううわぁぁぁあああああああああああああっっっ!!!!!」 「なんじゃっ!?」 トイレになんか居た。 それは半端じゃない衝撃だった。 すぐに逃げ出さずに今まで耐えた俺に、俺は心の底から賞賛を送る。 そして、俺は俺に言ってやる。 好きなだけ叫べ、と。 「なんだお前!誰だお前!!親父!!!お袋!!!!どうしようトイレにちんちくりんがいる!!!!ぎゃぁああああああっっっ!!!!!!」 「ち!?ちんちくりんじゃと!?」 なんかちんちくりんの左眉がひくりと動いたが気にしてられるか。 俺の絶叫に迅速に行動した親父とお袋が騒々しく走ってきた。 いや、騒々しいなんて言ったら二人に悪いな。 なにしろ一番うるせえのは俺だ。 「トイレにちん〇がいるだとっ!!??」 「ちげぇよ器用に聞き間違えんなつうか大声で叫ぶなクソ親父!!!!」 訂正。 この親父は最悪だ。 「トイレでチンジャオロース!!??一体どうやって!?」 「アンタもかお袋!!!!」 さっすが夫婦!! つうかなんでこの夫婦の息子が俺なんだ。 「二人ともふざけてんなって!!不法侵入だよ、早く警察呼んでくれっ!!」 「わっ、分かったわ!お父さん、犯人を逃がしちゃだめよっ!」 「もちろんさ母さん!かつて無駄に熊に挑んで瀕死になった実力、今こそ発揮する時だ!!」 もうなんかネタが古いな。 面白くもなんともない二人のコントに辟易しつつ、勇ましくトイレに向かう親父の為に道を開ける。 悲しくて目も当てられないが、これでもこの二人は大マジだ。 熊に挑んだって言うのが実話かどうか知らんが、昔っからこの親父には喧嘩で勝てた試しがない。 相手はちんちくりんでも犯罪者。 どうやって侵入してきたか分からない上に、"そもそも人間でない可能性は濃厚だ" なら、適任はやはり親父だろう。 なにしろこの黒祷家。 いや、黒祷一族は―――― 「………なんだ?誰も居ないぞ?」 トイレの中を見て、親父が言った。
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