8人が本棚に入れています
本棚に追加
つかさ、もう良いだろ?
俺、立派に役目を果たしたよな?
正直、我慢の限界なんだよ。
俺は、思いっきり息を吸い込んだ。
「――――ぅううわぁぁぁあああああああああああああっっっ!!!!!」
「なんじゃっ!?」
トイレになんか居た。
それは半端じゃない衝撃だった。
すぐに逃げ出さずに今まで耐えた俺に、俺は心の底から賞賛を送る。
そして、俺は俺に言ってやる。
好きなだけ叫べ、と。
「なんだお前!誰だお前!!親父!!!お袋!!!!どうしようトイレにちんちくりんがいる!!!!ぎゃぁああああああっっっ!!!!!!」
「ち!?ちんちくりんじゃと!?」
なんかちんちくりんの左眉がひくりと動いたが気にしてられるか。
俺の絶叫に迅速に行動した親父とお袋が騒々しく走ってきた。
いや、騒々しいなんて言ったら二人に悪いな。
なにしろ一番うるせえのは俺だ。
「トイレにちん〇がいるだとっ!!??」
「ちげぇよ器用に聞き間違えんなつうか大声で叫ぶなクソ親父!!!!」
訂正。
この親父は最悪だ。
「トイレでチンジャオロース!!??一体どうやって!?」
「アンタもかお袋!!!!」
さっすが夫婦!!
つうかなんでこの夫婦の息子が俺なんだ。
「二人ともふざけてんなって!!不法侵入だよ、早く警察呼んでくれっ!!」
「わっ、分かったわ!お父さん、犯人を逃がしちゃだめよっ!」
「もちろんさ母さん!かつて無駄に熊に挑んで瀕死になった実力、今こそ発揮する時だ!!」
もうなんかネタが古いな。
面白くもなんともない二人のコントに辟易しつつ、勇ましくトイレに向かう親父の為に道を開ける。
悲しくて目も当てられないが、これでもこの二人は大マジだ。
熊に挑んだって言うのが実話かどうか知らんが、昔っからこの親父には喧嘩で勝てた試しがない。
相手はちんちくりんでも犯罪者。
どうやって侵入してきたか分からない上に、"そもそも人間でない可能性は濃厚だ"
なら、適任はやはり親父だろう。
なにしろこの黒祷家。
いや、黒祷一族は――――
「………なんだ?誰も居ないぞ?」
トイレの中を見て、親父が言った。
最初のコメントを投稿しよう!