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「別に良いけど……」
なんだ?
ついさっきまで豪快に爆笑してたクセに、随分と渋い声を出してきたな。
とりあえず退室は延期だ。
居間に置かれたテーブルを挟んでテレビの正面に陣取る親父に目を向ける。
いつになく真剣だった。
親父から見て右は折椿が座ってる。
俺は左側に腰を下ろした。
それを見届けてから、親父が口を開く。
「お前、今日も行くのか?」
宴の事だと直ぐに理解する。
「……ああ。」
「そうか……学校に支障は出てないか?」
「問題ねぇよ。眠たいのは事実だけどな。」
何しろ宴は丑三つ時……午前二時に始まる。
帰ってくるのは三時過ぎだ。
例え八時に起きたとしても睡眠時間は削られる。
まぁ、学校終わってすぐさま帰宅して一時間か二時間ほど睡眠をとれば、別に苦ではねぇけどな。
学校までは徒歩で十分くらいだし、めんどくさがって部活に入らなかったので放課後の時間は大いにある。
これまで持て余してた時間だ。
ようやく使い道が見つかったって所だな。
「それなら良いが、あまり無理はするなよ?」
「分かってるっつの。」
親に心配される事ほどくすぐったいもんはねぇな。
有り難く思いながらも、言葉は乱暴になっちまう。
親父は、そんな俺を軽快に笑って見ていた。
「はっはっはっ、まぁ、お前は俺のガキだしな。その上、赤羽様達がいる。……大事にはならんだろ。」
赤羽"様"ね……アイツ等がそんな柄か?
その内の一人は、あんたの右隣でありきたりなサスペンスドラマを超真剣に見てるぞ?
「それとな。」
「まだあんのか?」
「母さんと相談して、近々、記女(しるめ)を招き入れる事にした。」
「なんだそりゃ?」
汁目?
汁芽?
どんな漢字を書くんだ?
「記す女と書いて記女と言ってな。まぁ、平たく言えば記録係りだ。お前が赤羽様達と再び契約した以上、俺達はそれを後に残す義務がある。」
「んなもん、自分達でやりゃあ良いじゃねえか。」
「お前………俺にそんな事出来ると思うか?」
これっぽっちも思わねえな。
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