3話~ある日の晩の黒祷家~

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閑話休題。 背を向ける親父に、声を掛けた。 「親父こそ無理すんなよ?」 「するわけ無いだろ。俺は母さんやお前と一緒に居たいからな。無理だと思ったら情けなかろうと一目散に逃げるさ。」 そう言い残して、親父は居間を後にしやがった。 まったく……格好いいんだか悪いんだか分かんねえよな。 今はもう見えない親父の背中に苦笑しつつ、俺は何とはなしにテレビを見た。 ………サスペンスドラマ終わってる。 「いやぁ、面白かったぁ!」 そして俺の正面では実に満ち足りた表情で伸びをする死神が一柱。 「面白かったのか、あれ?」 「最高だね。なんのドラマでも、王道ってのはやっぱり面白いよ。」 あれを王道ととるか。 ありきたりととる俺には面白さがさっぱり分かんねえ。 「それにしても記女か……また面白い者を招き入れようとしてるねぇ~」 「なんだ、話聞いてたのか?」 てっきりドラマに集中して聞こえてないと思ってたんだが。 「折椿は記女を見たことあるのか?」 「無いね。宗秋の頃は私達の記録は黒祷家の者が記してたからさ。」 そういや、赤羽もそう言ってたな。 「記女は格の高い巫女の仕事の一つでね。この辺りにはそこまで格の高い巫女は居なかった。」 「今は居んのかな?」 「さあね。居なかったとしても、このご時世なら連れてくるのに大した手間は無いだろ?通行手段は幾らでもある。」 確かにな。 巫女が新幹線やら電車やらに乗るってのもシュールな光景だ。 いや、流石に巫女服で乗るわけないとは思うが。 「にしても健のやつ、真剣な顔付きになると宗秋に似てるねぇ。さっきの声なんて、くらりと来たくらいさ。」 そりゃあ血族だからな。 「薫も後十年もすれば宗秋に似るのかね……だとしたら楽しみで仕方がないよ。」 やたらと老け込んだ発言だなおい。 つうか、 「折椿ってもしかして、宗秋の事が好きだったのか?」
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