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閑話休題。
背を向ける親父に、声を掛けた。
「親父こそ無理すんなよ?」
「するわけ無いだろ。俺は母さんやお前と一緒に居たいからな。無理だと思ったら情けなかろうと一目散に逃げるさ。」
そう言い残して、親父は居間を後にしやがった。
まったく……格好いいんだか悪いんだか分かんねえよな。
今はもう見えない親父の背中に苦笑しつつ、俺は何とはなしにテレビを見た。
………サスペンスドラマ終わってる。
「いやぁ、面白かったぁ!」
そして俺の正面では実に満ち足りた表情で伸びをする死神が一柱。
「面白かったのか、あれ?」
「最高だね。なんのドラマでも、王道ってのはやっぱり面白いよ。」
あれを王道ととるか。
ありきたりととる俺には面白さがさっぱり分かんねえ。
「それにしても記女か……また面白い者を招き入れようとしてるねぇ~」
「なんだ、話聞いてたのか?」
てっきりドラマに集中して聞こえてないと思ってたんだが。
「折椿は記女を見たことあるのか?」
「無いね。宗秋の頃は私達の記録は黒祷家の者が記してたからさ。」
そういや、赤羽もそう言ってたな。
「記女は格の高い巫女の仕事の一つでね。この辺りにはそこまで格の高い巫女は居なかった。」
「今は居んのかな?」
「さあね。居なかったとしても、このご時世なら連れてくるのに大した手間は無いだろ?通行手段は幾らでもある。」
確かにな。
巫女が新幹線やら電車やらに乗るってのもシュールな光景だ。
いや、流石に巫女服で乗るわけないとは思うが。
「にしても健のやつ、真剣な顔付きになると宗秋に似てるねぇ。さっきの声なんて、くらりと来たくらいさ。」
そりゃあ血族だからな。
「薫も後十年もすれば宗秋に似るのかね……だとしたら楽しみで仕方がないよ。」
やたらと老け込んだ発言だなおい。
つうか、
「折椿ってもしかして、宗秋の事が好きだったのか?」
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